世界の株式市場でハイテク株下落が激しい、米国金利上昇や台湾株急落、日本株は5月11日と12日の2日間で日経平均株価が1370円83銭下落した。株式市場の急落の背景には何があるのだろうか?原因となる材料をいくつかまとめてみた。
米国長期金利上昇懸念・米国雇用統計が市場予想を下回る
2021年5月7日に発表された4月の米国雇用者数が市場予想を大きく下回ったことで、金融マーケットが大きく揺れた。主要通貨に対して米国ドルが下落、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が低下、5ヶ月ぶりの大幅下落となった。
米国求人件数が過去最高と報じられ、JPモルガンの営業マンは出張を再開しているという景気回復、経済活動正常化を感じさせるポジティブニュースがある一方で、非農業部門雇用者数は前月比26万6000人増で市場予想の97万8000人増を大幅に下回った。
米国金利上昇の理由は
債券、株式、為替の価格変動は複雑に絡み合っている、投資家がリスクを取ってもリターンを得たい場合は債券より株式投資や外国為替投資を選択する。
反対にリスクを取れないときはローリスク・ローリターンの債券投資に向かう傾向がある。先物ヘッジに「債券先物買い・株式先物売り」や「債券先物売り・株式先物買い」というプログラム売買オーダーが走る時がある。
4月の米国雇用統計が市場予想を下回る内容だったことを受けて、米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和を早期縮小する観測が一時的に後退したものの、経済正常化に向かって金融緩和は縮小するだろうと再認識させられた。
これまで米国長期金利は1.5%を割り込んで推移してたが、この時に再び1.6%台へ金利上昇した。米国株式市場は金利上昇と連動して株価下落、特に世界的に半導体不足と言われ業績好調を先取りしてハイテク株が買われている相場だったが反動安となった。
ハイテク株、電子部品関連株が急落
米国株式市場でハイテク企業の株価が急落、世界の半導体製造の中核となる台湾株式市場も急落した。日本株では半導体製造装置関連企業の株価が売られた。
主要株では、東京エレクトロン(8035)株価は2日間で3570円値下がりして4万46480円、アドバンテスト(6857)株価は3日間で960円続落して9220円となった。ソフトバンクグループ(9984)は純利益4兆9879億円と過去最高を記録したにもかかわらず、2日間で990円下落して9110円となった。
SOX指数(米国フィラデルフィア半導体指数)は4.7%急落、フェイスブックやアルファベット投資判断引き下げ、クアルコム株価急落も響いて日本株はハイテク株、グロース株を中心に大きく値下がりした。
日本株は買いか売りか?
日経平均株価終値は5月10日に2万9518円34銭だったのが、2営業日続落で2万8147円51銭まで下落幅1370円以上となった。株価急落は投資家心理を悪化させる、信用取引の場合は証拠金不足に陥り追証発生から損切りのポジション整理売りが出やすく売りが連鎖する場合がある。
インフレ警戒からグロース株が下落、投資対象は割安株バリュー株へ資金シフトの動きが見られた。半導体関連株が急落する一方で、日本製鉄(5401)、JFEホールディングス(5411)などの鉄鋼株、日本郵船(9101)など海運株は業績改善期待から景気敏感のバリュー株買いが継続した。
大手証券会社相場見通しによると、ハイテク相場はインフレ動向に要注意としながら成長期待は変わらず、むしろ株価の割高感が一時的に解消したとの解説をしている。
注目の株式投資テーマ
経済正常化、経済再開、DX関連、シリコンサイクル、EV電気自動車などグリーンリカバリー、インフラ投資関連への関心が高く、個人投資家の長期資金iDeCo、投資信託や機関投資家、ヘッジファンドからの買い注文が続くと予想される。
新型コロナウイルスの影響で、ビジネスのオンライン化が加速、リモートワーク在宅勤務が増え、BtoBマーケティングは感染リスク減の為に、訪問営業が減りWeb商談など非対面営業需要が一層高まってきた。
企業のDX推進により半導体需要は更に高まり、今後3年間のハイテク企業業績見通しは増益が続くと予想されている。株価上昇は割高感があると言われ、株価急落すると割安感が出てきたという株の世界だが企業決算・業績予想から一喜一憂せず将来を見通した投資視点で買いタイミングを探る時だろう。